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まずは「知る事」から始まる

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SNSで拡散した、あの衝撃の数字

「税金の使い道が独裁国家並みに不透明」——そんな刺激的な言葉とともに、あるランキング表がSNS上で急拡散したことをご存知でしょうか。

その数字はこうです。「世界租税支出透明性指数(GTETI)」という国際的な指標で、日本は調査対象104カ国中94位。スコアは100点満点中わずか30.1点。ロシアよりも低く、ランキング最下位のアルジェリアとほとんど差がない——。

ある投稿は3800件以上リポストされ、表示回数は148万回を超えたといいます。コメント欄には「税金透明30%、暴動起きるくらいのレベル」「独裁国家レベルの不透明度」といった言葉が並びました。

正直に言えば、この数字を最初に目にしたとき、私も「日本、そんなにヤバいのか」と思いました。でも、少し立ち止まって調べてみると、この話には「本当に深刻な部分」と「拡散の過程で歪められた部分」の両方が混ざっていることが見えてきます。

今日はこの話題を入り口に、「私たちは統計やランキングとどう付き合うべきか」「税金の透明性という、地味だけど本質的に重要なテーマ」について、一緒に考えてみたいと思います。

そもそもGTETIって何を測っている指標なのか

まず前提を整理しましょう。GTETI(Global Tax Expenditures Transparency Index:世界租税支出透明性指数)は、スイスの経済政策評議会(CEP)とドイツの開発・持続可能性研究所(IDOS)が共同で設立した「租税支出研究所(Tax Expenditures Lab)」という機関が2023年に初めて発表した指数です。

ここで重要なのが「租税支出(Tax Expenditures)」という言葉の意味です。これは、税金の使い道全般を指すのではなく、もっと限定的な概念です。

租税支出とは、本来であれば課税されるはずの所得や資産に対して、特別に与えられている税制上の優遇措置のことを指します。具体的には次のようなものが該当します。

  • 医療費控除
  • 扶養控除
  • 住宅ローン控除
  • 企業向けの研究開発税制の優遇
  • 各種の非課税制度

つまりGTETIは「国の予算がどう使われているか(歳出の透明性)」を測る指標ではなく、「誰にどんな税優遇が与えられていて、それがどれだけ公開・検証されているか」を測る指標なのです。この違い、地味に見えて実はかなり大きな違いです。

評価は5つの側面から行われます。

  1. 一般公開(公的な利用可能性)
  2. 制度的枠組み
  3. 手法と範囲
  4. 記述的な租税支出データ
  5. 租税支出の政策評価

それぞれ20点満点で、合計100点満点というスコア設計になっています。

日本の実際の順位と、見落とされがちな「その後」

2023年10月に発表された初回ランキングでは、日本は104カ国中94位、スコア30.1点でした。この数字だけを見れば、確かにかなり低い水準です。

ちなみにG7各国の当時の順位を見てみると、次のようになっていました。

順位
カナダ2位
ドイツ4位
フランス5位
アメリカ6位
イタリア7位
イギリス27位
日本94位

G7の中で日本だけが突出して低い。これは事実であり、看過できないポイントです。関西学院大学の上村敏之教授(財政学)も日本経済新聞への寄稿で、日本の租税支出の情報公開度が極めて低いことを重く受け止める必要があると指摘しています。

ただし、ここで見落とされがちな事実があります。GTETIは2024年12月に指数を改訂しており、そこでは日本の順位は104カ国中73位、スコアは38.4点に上昇しているのです。

なぜ改善したのか。報告書の説明によれば「より包括的な報告書が確認されたため」とされています。日本の制度が劇的に変わったというより、評価の際に参照される公開資料の把握が進んだ、というニュアンスに近いようです。

SNSで拡散した「94位・30.1点」という数字は、あくまで2023年の初回データです。最新の2024年版では改善しているという事実まで含めて共有されなければ、正確な現状認識とは言えません。ここに、拡散型の情報が持つ危うさの一端が見えます。

「独裁国家並み」という表現、本当に妥当なのか

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、このGTETIをめぐる拡散情報について「ミスリードで不正確」という判定を下しています。理由は主に二つです。

一つ目は、先ほど触れた「租税支出の透明性」と「税金の使い道全体(歳出)の透明性」を混同している点です。GTETIは公共事業の予算配分や国全体の歳出構造を評価する指標ではありません。あくまで税制優遇措置というピンポイントな領域についての指標です。それを「税金の使い道が独裁国家並み」と一般化してしまうのは、指標の設計趣旨を超えた解釈だと言えます。

二つ目は、94位という数字が最新のものではなかった点です。

租税法が専門の三木義一氏(青山学院大学名誉教授)はJFCの取材に対し、興味深いコメントを残しています。GTETIの指標で日本の順位が低いのは事実であり、特別措置のチェック体制が弱いのは間違いない、としつつも、税の使い道にあたる歳出については「省庁ごとに出していてわかりにくいが、決算などは一応ある」とも述べているのです。

つまり実態は、「完全にブラックボックス」でもなければ「世界トップクラスに透明」でもない、という、SNSの見出しほど極端ではないグラデーションの中にある、ということです。

ここで一つ、みなさんに問いかけてみたいことがあります。

私たちは「独裁国家並み」というようなセンセーショナルな言葉に触れたとき、どれくらいの頻度で一次情報や指標の定義そのものに立ち返って確認しているでしょうか。

SNSの拡散スピードは、検証のスピードをはるかに上回ります。今回のケースは、その典型例だったと言えるかもしれません。

それでも「本質的な問題」は消えていない

ここまで「拡散情報の誤解」について書いてきましたが、だからといって「日本の税制は何も問題ない」という結論にはなりません。むしろ逆です。

冷静に事実だけを積み上げても、次のことは動かせません。

  • 2023年時点で104カ国中94位、G7で最下位だった
  • 2024年に改善したとはいえ73位で、依然として下位グループ
  • 5つの評価軸すべてで低評価という指摘もある
  • 専門家自身が「特別措置のチェックができていない」と認めている

租税支出、つまり税制優遇措置というのは、言い換えれば「見えない補助金」です。医療費控除や住宅ローン控除のように、私たち一般市民に身近なものもあれば、特定の業界・特定の企業だけが恩恵を受けるような優遇税制も存在します。

この分野の透明性が低いということは、次のような問いに答えられない状態が続いている、ということでもあります。

  • どの優遇税制が、年間いくらの税収減につながっているのか
  • その優遇によって、誰がどれだけ得をしているのか
  • その優遇制度は、本当に政策目的を達成しているのか、定期的に検証されているのか

企業や業界団体のロビイングによって温存され続けている優遇税制があったとしても、透明性が低ければ、それを検証すること自体が難しくなります。これは「税金の使い道全体」の話ではないかもしれませんが、税制の公平性という民主主義の根幹に関わる、極めて重要な論点です。

三木氏が指摘するように、歳出についても「わかりにくいが、決算などは一応ある」という表現には、「一応公開はしているが、実質的にアクセスしやすく検証可能な形にはなっていない」というニュアンスが滲みます。これもまた、日本の行政における情報公開文化の課題として、正面から議論すべきテーマではないでしょうか。

なぜ日本はこうした指標で低くなりがちなのか

少し視点を広げて考えてみます。なぜ日本はこの種の国際指標で、しばしば低い順位になりやすいのでしょうか。いくつかの仮説を提示してみます。

一つ目は、情報公開そのものへの制度的なインセンティブの弱さです。 行政が能動的にデータを公開し、市民や研究者が検証しやすい形式(オープンデータなど)で提供する文化が、他の先進国と比べて発展途上にある可能性があります。

二つ目は、政策評価(エビデンスに基づく政策立案、EBPM)の文化がまだ根付いていないことです。 制度を作った後、それが本当に効果を上げているかを定期的に検証し、公表するというサイクルが弱いと、GTETIのような「政策評価」を問う項目のスコアは伸びません。

三つ目は、「お上に任せておけば大丈夫」という社会的な信頼構造です。 記事の中で紹介されていたある論者は、「従順で統治しやすい国民というのは果たして褒め言葉なのか」という、かなり挑発的な問いを投げかけています。行政への信頼が厚いこと自体は悪いことではありませんが、その信頼が「検証しない・させない」という状態と表裏一体になっているとしたら、それは健全なガバナンスとは言えないかもしれません。

みなさんはどう思われますか。行政への信頼と、行政の透明性は、本来は対立する概念ではないはずです。むしろ、透明性が担保されているからこそ、健全な信頼が生まれる、という順番の方が本来は自然なのではないでしょうか。

情報を受け取る私たちにできること

最後に、この一連の騒動から得られる、もう一つの「気づき」について触れておきたいと思います。それは、統計やランキングという「数字の権威」に対する向き合い方です。

数字は説得力を持ちます。「94位」「30.1点」という具体的な数値は、感覚的な批判よりもはるかに強い印象を与えます。だからこそ拡散力を持ち、だからこそ誤解も生まれやすいのです。

今回のケースで私たちが学べる教訓は、シンプルに整理すると次の3点に集約できると思います。

  1. 指標が「何を測っているか」を確認する。 「税金の透明性」という大きな言葉でくくられていても、実際には「租税支出」という限定された領域の話だった、というように、指標の定義は思っている以上に狭いことがあります。
  2. 数字の「時点」を確認する。 拡散していた94位は2023年の数字で、2024年には73位に改善していました。古いデータがいつまでも「最新の事実」として語られ続けることは、情報空間では珍しくありません。
  3. 専門家の見解に、多角的にあたる。 一つの投稿、一つの記事だけで判断せず、実際にその分野を研究している専門家が、どのような留保つきでコメントしているかを確認する姿勢が重要です。

とはいえ、これは「拡散した人が悪い」という話でもありません。GTETIという聞き慣れない指標を掘り下げ、日本の課題として世に問うたこと自体には意義があります。実際、この指標をきっかけに、租税支出の透明性という、これまであまり注目されてこなかったテーマに光が当たったことは、間違いなくポジティブな側面です。

問題は「センセーショナルな一次的な反応で終わらせるか」「そこから一歩踏み込んで、正確な理解と建設的な議論につなげるか」という、私たち自身の情報との向き合い方にあるのだと思います。

おわりに

日本は「独裁国家並み」に不透明なのか——結論から言えば、それは言い過ぎです。しかし「日本の租税支出の透明性が、先進国の中でも際立って低い」という事実そのものは、揺るぎません。

派手な見出しに引っ張られて「そりゃそうでしょ」と流してしまうのも、逆に「デタラメな指標だ」と切り捨ててしまうのも、どちらも思考停止に近い態度かもしれません。

大切なのは、そのあいだにある「じゃあ、具体的にどの制度の、どの部分が不透明なのか。それを変えるには何が必要なのか」という、地味だけれど本質的な問いに向き合うことではないでしょうか。

税金は、私たち全員が当事者です。その使われ方、優遇のされ方について「よくわからないけど、まあお上に任せておけばいいか」で済ませるのか、それとも「わからないなら、わかるようにしてほしい」と声を上げるのか。その姿勢の積み重ねが、次にこの種の指標が発表されたときの日本の順位を、少しずつ動かしていくのだと思います。

みなさんは、この話を読んでどう感じましたか。

上城 孝嗣

日本を愛する人と繋がりたい🇯🇵🌸毎日「気づき」を提供するために発信中! 嘘を教える教育や、メディアに破壊され続けてきた日本人の魂。まずは何事にも好奇心を持ち、世界にも目を向ける事。これまで知らなかった多くの事を学ぶと全てが繋がって真実が見えてきます。 「知らないのは恥ではない、知ろうとしないのが恥である」

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