学校や公共施設に置いてある「刺股(さすまた)」。あの二股に分かれた長い棒を見て、「いざとなればこれで不審者を押さえ込めるな」と思っている人は少なくないんじゃないかと思います。
でも、ちょっと待ってください。
元埼玉県警特殊部隊(SATに準ずる部隊)、そして元自衛隊特殊作戦群という、日本でも屈指の実戦経験を持つ田村装備開発の田村氏が警鐘を鳴らしているのが、まさにこの「メディアが刷り込んだ刺股のイメージ」についてなんです。
目次:Contents
テレビで見る”あの使い方”、実戦ではほぼ通用しない
よくニュースや訓練映像で見かける刺股の使い方といえば、複数人で一斉に相手を壁に押し当てて動きを封じる、あのシーンですよね。
確かに、あれは一つの正解です。ただし——相手が冷静で、かつこちらが複数人いて、さらに相手が抵抗する意志を失っているという、かなり限定的な状況においての話。
刃物を持って興奮状態にある人間が相手の場合、話はまったく変わってきます。
興奮状態の人は、痛みへの感覚が鈍くなっていることが多く、通常では考えられない力や動きを見せることがあります。「壁に押し当てれば終わり」というシナリオは、そもそも相手がそこまで抵抗してこない前提で成り立っているんです。
刺股の弱点①:リーチの錯覚
刺股は確かに長い。でも田村氏が指摘するのは、「長さ=安全圏」という思い込みの危険性です。
刺股の先端で相手を捉えようとした瞬間、使い手の上半身は自然と前に出ます。慣れていない人がやると、先端を相手に向けているつもりで、実はじわじわと自分が危険圏に入り込んでしまっていることがある。
相手が刃物を持っている場合、刺股の先端と相手の刃の間の距離は、思っているよりずっと短くなります。
刺股の弱点②:相手が「突っ込んでくる」動きへの対応
もう一つの大きな落とし穴が、相手が後退するのではなく、逆にこちらへ突進してくるケースへの対応です。
刺股は「押し当てる」「距離を保つ」ためには機能しますが、相手が一気に間合いを詰めてきたとき、長い棒は逆に邪魔になる場面もあります。棒が長すぎて取り回せない、狭い廊下では横に振れない——こういった状況は、学校の廊下や教室の中では十分に起こりえます。
では、どう使えばいいのか?
田村氏が強調するのは、刺股を「捕まえる道具」ではなく「距離を作り、時間を稼ぐ道具」として捉えることです。
相手を制圧することを最初から目指すのではなく、まず他の人が逃げるための時間を稼ぐ。次の対応(警察・応援の到着)につなぐための盾として機能させる。そういう発想の転換が必要だということです。
また、「複数人での連携」がいかに大切かも改めて強調されていて、一人で立ち向かうことの危険性は繰り返し語られています。
先生・保育士・施設スタッフに、ぜひ知っておいてほしいこと
刺股が学校に設置されているのは、それ自体はとても意義のあることです。ただ、「置いてある=使える」ではないし、「使い方を知っている=実戦で通用する」でもない。
田村氏のような本物の実戦経験を持つ人が無料で発信してくれているこういった知識は、今すぐ活かせるものばかりです。特に、毎日大切な子どもたちと接する先生方や保育士さん、施設スタッフの方には、一度真剣に向き合ってみてほしいと思っています。
「もしものとき」に、自分と子どもたちを守れるかどうか。それは道具があるかどうかではなく、正しい知識と心構えがあるかどうかにかかっているんです。
田村装備開発はYouTubeチャンネルで護身術・危機管理に関する実践的な情報を発信しています。刺股の実演映像はぜひ実際に確認してみてください。











