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“完全に終わった男”が、なぜか日本で生き返っていた
2019年、ジョイ・イトウ(伊藤穣一)という名前は、世界中のテック界隈で「禁句」に近い扱いになりました。
性犯罪者として歴史に名を刻んだジェフリー・エプスタインから資金を集め、しかもそれを意図的に隠蔽していたことが発覚。MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボの所長という超エリートポストを辞任し、ハーバード大学の関連職も剥奪、複数の理事職も失いました。
テック業界での信用は地に落ち、誰もが「この人のキャリアはもう終わった」と思ったはずです。
……日本を除いては。
それから6年後の2025年、イトウは日本政府が推進する国家プロジェクト「Global Startup Campus Initiative」の事実上の戦略リーダーとして、4億ドル超の公的資金が動くプロジェクトの中枢にいる——そんな衝撃的な事実を、ニューヨーク・タイムズがスクープしました。
プロジェクトそのものは”本物の国家構想”だった
まず誤解のないように言っておくと、このプロジェクト自体は決して怪しげな話ではありませんでした。
2022年、当時の岸田文雄首相が打ち出した「東京に米日トップ大学と連携したスタートアップ拠点を作る」という構想で、日本のイノベーション競争力を底上げするための国家プロジェクトです。2023年には広島で開催されたG7サミットの場で、岸田首相が直接バイデン大統領に売り込むほどの本気度でした。
完成目標は2028年ごろ。MIT、ハーバード、カーネギーメロン大学、慶應義塾大学といった日米の名だたる大学との連携も視野に入れ、公表済みのパートナーには東京大学、インペリアル・カレッジ・ロンドン、シンガポール国立大学なども名を連ねています。
絵に描いたような「日本発グローバルイノベーション拠点」の夢——のはずでした。
「甘利明名義のメモ」で空気が変わった
転機は2024年初頭に訪れます。
甘利明元幹事長の名義で作成されたとされる内部メモで、イトウが「事実上の戦略リーダー級」としてプロジェクトに参画していることが、関係者間で共有されたのです。
このメモが出回った瞬間から、空気が一変したとNYTは報じています。
「あの人物が関わっているなら……」
連携候補として打診を受けていたMIT、ハーバード、カーネギーメロン、慶應義塾大学などが、次々と距離を置き始めました。当然です。エプスタイン問題で最も打撃を受けたのはMIT自体でもあるわけですから、そのMITが「エプスタインのカネを隠蔽していた人物」と再び手を組む——というのは、機関としての存続に関わる判断になります。
結果、プロジェクトは自らが設定した工程目標から遅れ始めました。
そして「エプスタイン資料」が追い打ちをかける
さらに追い打ちとなったのが、米司法省が公開した最新の「エプスタイン関連資料」です。
これによって、イトウとエプスタインの関係の「深さ」が改めて可視化されました。両者のメールは4,000通超と分析されており、2013〜2014年だけで少なくとも5回、エプスタインの私有島への訪問を計画・実施した記録が残っています。
そして最も注目されているのが、2014年5月のメールです。イトウがMIT内の「slush fund(裏金口座)」に言及し、同月に「50万ドルが入金した」と受領を確認している記録があるとされています。
これはもはや「距離が近かっただけ」では説明できません。「金の匂い」が、記録として残っているわけです。
政府の説明と「内部文書」の食い違いという闇
2025年の国会では、本庄聡議員がこの問題を取り上げ、政府を追及しました。
政府側の答弁は「不正は確認していない」「知見が高い人物だ」というもので、イトウの関与を「非常勤アドバイザー」と説明しました。
しかし、NYTが入手した内部文書では、イトウは「非常勤アドバイザー」などという言葉とはかけ離れた「中枢的役割」として語られていたといいます。
「非常勤アドバイザー」と「中枢的役割」——この言葉の落差に、何かが隠れていると感じるのは、陰謀論的な見方をするまでもなく、ごく自然な疑問ではないでしょうか。
陰謀論的に読むとこうなる
少し踏み込んだ見方をしてみましょう。
エプスタインという人物が世界中の政財界・学術界のエリートたちと「深い関係」を持ち、その関係が単なる慈善活動や学術支援にとどまらない「何か」を含んでいたのではないかという疑惑は、今も世界中で燻り続けています。
イトウのケースで注目すべきは、彼が「エプスタインとの関係を隠していた」という事実です。隠す必要があったということは、表に出せない何かがあったということです。
そして今回、その人物が日米をまたぐ国家プロジェクトの中枢に、政治家の名前付きのメモによって「静かに」入り込んでいた。
岸田文雄、甘利明、高市早苗——錚々たる名前が並ぶ中で、なぜこのタイミングで、この人物が選ばれたのか。
「知見が高い」という説明だけでは、あまりにも多くの疑問が残ります。世界中に「知見の高い」テクノロジー専門家はいるはずです。なぜ、よりによって、エプスタインとの金銭的関係を疑われ、世界の名門大学が距離を置いた人物でなければならなかったのでしょうか。
日米の政財界をつなぐ「見えない糸」——エプスタイン・ネットワークが完全には切れていないとすれば、今回の構図はその延長線上にあるとも読めます。
7月が分岐点になる
このプロジェクトは法人化に国会承認が必要で、判断は7月が見込みとされています。
4億ドル超の公的資金、日米の国家的威信、そしてエプスタインとの「金の記録」を持つ人物の中枢関与——これらすべてを抱えたまま、日本の国会がどう判断を下すのか。
巨大な夢の足元に、今も消えない「名前の影」が落ちたままです。
NYTのスクープが日本国内でどこまで波紋を広げるか、そして政府が国会でどんな説明をするのか——7月に向けて、目が離せない展開になりそうです。







