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ペロブスカイト太陽電池って何?
2009年、桐蔭横浜大学の宮坂力教授が世界で初めて発表した「ペロブスカイト太陽電池」をご存知でしょうか。
これ、普通の太陽電池とは全然違います。インクのように材料を塗ったり印刷したりするだけで作れるんです。しかも変換効率は25%超。従来のシリコン太陽電池に匹敵するレベルまで到達しています。フィルム型なら折り曲げることもできるので、ビルの壁面や車のルーフ、工場の屋根など「今まで太陽電池を貼れなかった場所」に貼れる革命的な技術です。
日本発の技術で、しかも世界が注目する次世代エネルギーの切り札。2035年には世界市場規模が1兆円超えとも予測されている、そんな「夢の電池」の話です。
ところが——。
「お金がなかった」たったそれだけの理由で
2009年に宮坂教授が論文を発表した当時、特許の海外出願にはものすごいお金がかかりました。国ごとに数百万円。主要国すべてで出願しようとすれば、数千万円規模になることも珍しくありません。
当時の大学には、そんな予算はありませんでした。教授個人が賄えるわけもありません。
「もったいないな」と思いながらも、日本は海外出願を十分にできないまま、せっかくの基礎技術を世界に向けてオープンにしてしまったんです。
その隙を見逃さなかったのが、イギリスのスタートアップ「Oxford PV(オックスフォード・フォトボルタイクス)」です。日本の研究成果の上に乗っかる形で、特許ポートフォリオをしっかり固めていきました。
そして2025年4月——Oxford PVは中国の大手太陽電池メーカー「Trina Solar(トリナ・ソーラー)」に対して、ペロブスカイト太陽電池に関する独占的特許ライセンス契約を締結しました。
中国本土での製造・販売権だけでなく、他社への再許諾(サブライセンス)権まで付いているという、とんでもない内容です。
「日本が発明 → イギリスが特許で囲い込み → 中国に売る」という構図
整理すると、こういう流れです。
- 日本人研究者が世界初の技術を生み出す
- 日本は海外特許を取る余裕がない
- イギリスのスタートアップが周辺特許をガッチリ押さえる
- イギリスが中国の巨大メーカーに独占ライセンスを供与
- 中国が特許件数・技術・生産力で一気に世界トップへ
特許出願件数で見ると、日本からの出願数は2019年まで5年連続で世界一だったのに、2020年には4位に転落しています。代わってトップに躍り出たのが中国で、2021年の出願数は全体の約4割近くを占めるまでに増えました。
さらにTrina Solarは世界のペロブスカイト太陽電池セル発明特許ランキングで出願件数481件・世界1位を獲得し、2位との差は約40%にも達しています。
日本が発明した技術を、イギリスが囲い込み、中国に売り渡す。この構図は、エネルギー分野における現代の「植民地的搾取」と言っても、決して言い過ぎではないかもしれません。
「偶然」にしてはできすぎていませんか?
ここからはちょっと「深読み」の話です。
高市早苗首相(当時の政策担当時期)がイギリスに海底資源の掘削を依頼して、途中で頓挫したという話があります。なぜか情報はイギリス側にだいたい渡っているのに、日本側のプロジェクトだけが止まる——そんな不思議なパターンが見え隠れするんですよね。
今回のペロブスカイト太陽電池も、日本の研究情報はどんどん世界に共有され(論文という形で)、いざ商業化という段階になったらイギリス企業が美味しいところを持っていく。
陰謀論的に言えば、「日本が技術を生み出すR&Dラボとして機能し、その果実はシティ・オブ・ロンドンを中心とした金融ネットワークが収穫する」という構造が、エネルギー分野で繰り返されているように見えなくもないんです。
もちろん、これは証明できる話ではありません。でも「偶然にしては、できすぎている」と感じる人が増えているのも事実です。
日本はまだ戦えるのか?
悲観ばかりしていても仕方ないので、現状の「日本の反撃」も確認しておきましょう。
特許庁の調査報告書によると、中国の追い上げは急ではあるものの、日本はまだ優位な位置にいる部分もあります。特にフィルム型では、耐久性や大型化の面で世界をリードしている状況です。
積水化学工業は30cm幅のペロブスカイト太陽電池(フィルム型)の連続生産が可能となっており、耐久性10年相当、発電効率15%の製造に成功しています。量産化に向けた技術開発も着実に進んでいます。
また、経済産業省は2024年11月に次世代型太陽電池戦略を発表し、ペロブスカイト太陽電池に力を入れることを改めて明確にしています。
課題は耐久性と、製造に使われる鉛の環境問題です。これらをクリアできるかどうかが、日本勢の逆転劇の鍵を握っています。
「技術で勝って、ビジネスで負ける」を繰り返すのか
シリコン太陽電池でも同じことが起きました。日本が世界シェア50%を誇っていたのに、中国の量産攻勢に押されて今や1%未満です。
ペロブスカイト太陽電池で、日本は同じ轍を踏もうとしているのでしょうか。
技術力は確かにある。でも「特許戦略」「資金力」「量産スピード」で後手に回り続けていては、またしても「発明国なのに恩恵を受けられない」という悲劇が繰り返されます。
問題は研究者の能力ではなく、「知的財産を守る仕組み」と「国家戦略としての資金投下」が、他国と比べてあまりにも脆弱だということです。
日本が生んだ「夢の電池」を、今度こそ日本が実りにする——そのためには、研究室から官邸まで、国全体での本気の戦略が必要なんです。
1兆円市場の果実を誰が手にするのか。その答えが出るのは、もうすぐそこまで来ています。












