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禁酒法という”神風”が生んだモンスター
1899年、ニューヨークのブルックリン。貧しいイタリア移民の家庭に生まれたアルフォンソ・カポネは、誰も想像しなかったような人生を歩むことになります。
幼い頃から街のギャング団「ファイブ・ポインツ・ジュニア・ギャング」に加わり、やがてニューヨーク・アンダーワールドの大物ジョニー・トリオに見出されます。そのトリオの命令でシカゴへ移ったカポネを待っていたのは、歴史が用意した”究極のビジネスチャンス”でした。
1920年に施行された禁酒法(ヴォルステッド法)です。
アルコールを禁じれば闇市場が生まれる——これは現代人なら誰でも予測できる話ですが、当時の政治家たちはそこまで考えていなかった(あるいは考えていたのに通してしまった?)。陰謀論的に見れば、「禁酒法は最初からギャングを肥え太らせるために存在した」という見方もあるくらいです。実際、この法律が施行された13年間で、カポネのような組織犯罪者たちは天文学的な富を得ることになります。
シカゴを”購入”した男
カポネがシカゴで築いた帝国の規模は、今の感覚でいえばちょっとした多国籍企業です。
密造酒の製造・販売、売春宿の経営、賭博場、そして警察・政治家への組織的な賄賂。カポネは敵対するギャングを暴力で排除しながら、権力者を金で買い続けました。シカゴ市長や警察署長まで懐に収めていたとも言われており、「カポネが購入していないシカゴの権力者はいなかった」という言葉が残っているほどです。
そのビジネスの年間収益は現代の貨幣価値に換算すると約1,000億円以上とも推計されています。
1929年の「バレンタインデーの虐殺」はカポネの名を世界に知らしめた事件です。対立するバグズ・モラン一家の構成員7人をカポネの部下が警察官に変装して射殺したこの事件、カポネ本人はアリバイを持っていました(フロリダにいたと主張)。完璧すぎるアリバイというのもまた、陰謀論者が好む話のタネで、「事前に計画してわざわざ遠ざかっていた」とするのが自然な見方でしょう。
警察が手を出せなかった理由
ここが最も面白いところです。カポネは公然と犯罪を行い、新聞記者とインタビューをし、野球の試合に顔を出し、まるで有名人のように振る舞っていました。なぜ誰も彼を逮捕できなかったのか。
答えはシンプルで、逮捕すべき警察ごと買収していたからです。
当時のシカゴ市警の汚職は構造的なもので、末端の警察官から上層部まで、カポネの組織からの”給料”を受け取っていたとされます。これを現代的な視点で見れば、カポネはギャング組織のボスであると同時に、非公式の地下政府の長だったとも言えます。
法律も、警察も、政治家も——すべてをコントロールしていた男。ある意味でカポネは「システムの抜け穴を最大限に利用した人間」の極端な例です。
彼を追い詰めたのは「税務署」だった
そして最大の皮肉がここに来ます。殺人、密造、売春、贈賄——あらゆる重罪を犯してきたカポネが最終的に有罪になった罪状は「脱税」でした。
FBIの前身である司法省の特別捜査官エリオット・ネスが率いた「アンタッチャブルズ」が有名ですが、実際にカポネの命取りになったのはIRS(アメリカ内国歳入庁=税務署)の執拗な捜査でした。
犯罪で得た収入でも、アメリカでは申告義務があります。カポネは莫大な収入を申告していなかったため、1931年に脱税で起訴・有罪判決。11年の禁固刑を言い渡されます。
「銃では倒せなかった男を、税金が倒した」——これはアメリカ司法史に残る逆説です。陰謀論的に言えば、「正面から戦えないから別の罪状を使った」という見方もでき、現代でも権力者を失脚させるときに”別件逮捕”的な手法が使われることを考えると、妙にリアルな話に聞こえます。
カポネのその後、そしてギャングはどこへ消えたのか
刑務所でカポネを蝕んだのは、若い頃に感染した梅毒による神経障害でした。釈放時にはすでに精神的・肉体的に衰弱しており、1947年にフロリダの自宅で静かに死去します。かつて1,000億円規模の帝国を率いた男の最期としては、あまりにも地味な幕切れでした。
では、カポネが消えた後、ギャングたちはどこへ行ったのでしょうか。
実は、消えたのではなく、形を変えて生き残ったと見るのが正確です。
禁酒法廃止後、組織犯罪は新たな収益源を求めて多角化を進めます。麻薬密売、労働組合への浸透、建設業界との癒着、カジノ運営——シカゴのマフィアは「アウトフィット」として長く存続し、ニューヨークの「ファイブ・ファミリーズ」は20世紀後半まで強大な力を持ち続けました。
現代のマフィアはどこにいるのか
「マフィアは映画の中だけの話」——そう思っている人は、少し認識を改める必要があるかもしれません。
イタリアでは、シチリアのコーザ・ノストラ、カラブリアの’ンドランゲタ、ナポリのカモッラが現在も活動中です。特に’ンドランゲタは現在、ヨーロッパのコカイン流通の大部分を牛耳っているとEUROPOL(欧州刑事警察機構)が報告しています。
ロシアではソ連崩壊後の混乱期に台頭した「ロシアン・マフィア(ヴォリ・ヴ・ザコーネ)」が世界規模で活動しており、ロンドン、ニューヨーク、東京にまでその影響が及んでいるとされます。
日本では、暴力団対策法の強化により山口組や住吉会などの公然とした活動は大きく制限されましたが、「フロント企業」を通じた経済活動への浸透は続いているという指摘があります。
そして最も興味深い陰謀論的視点がここです。現代のマフィアは昔のように”暗黒街のボス”という分かりやすい形をしていない——スーツを着て、合法的なビジネスの皮をかぶり、政財界と溶け込んでいるという見方が、多くの犯罪研究者や捜査機関によって示されています。
「組織犯罪と合法経済の境界線は、あなたが思っているより曖昧だ」というのは、ただの陰謀論ではなく、国際刑事警察機構(インターポール)が繰り返し警告していることでもあります。
まとめ:システムの隙間に生きる者たち
アル・カポネは時代が生んだ怪物ですが、同時に「法律の抜け穴」「貧富の格差」「腐敗した権力」という普遍的な問題が生み出した存在でもあります。
禁酒法という愚かな法律がなければ、カポネはただのブルックリンの不良で終わっていたかもしれません。そして現代でも、不合理な規制や格差は必ず闇市場と犯罪組織を生み出す——この構造は100年経っても変わっていないんです。
カポネが「暗黒街の帝王」として君臨できたのは、彼が特別に悪かったからではなく、そうなれるシステムが存在していたから——そこを忘れてはいけないと思います。







