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まずは「知る事」から始まる

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みなさんは、日本国憲法を最後に読んだのはいつですか?学校の授業で習ったはずなのに、いざ「前文を読んでみて」と言われると、なんとなくぼんやりとしか思い出せない、という方も多いのではないでしょうか。実は私もそのひとりでした。

そんな私が最近、あらためて手に取ったのが、作家・井上ひさし氏による『井上ひさしの子どもにつたえる日本国憲法』(講談社・2006年)という一冊です。


井上ひさしが「翻訳」した理由

井上ひさし氏は、日本を代表する劇作家・小説家として知られ、ユーモアを交えながら社会の本質を鋭くえぐる作風で知られていました。そんな彼が晩年に取り組んだのが、この「憲法の子ども向け翻訳」というプロジェクトでした。

氏がとくに「これだけは読んでおいてほしい」と強調したのが、前文と第九条です。日本国憲法の前文は、国民主権・平和主義・基本的人権の尊重という三大原則が凝縮された、いわば憲法の「顔」ともいえる部分です。そして第九条は、戦争の放棄と戦力の不保持を定めた、世界的にも非常に珍しい条文として知られています。

大人でさえ「なんとなくわかった気がする」で済ませてしまいがちなこれらの条文を、井上氏は小学生でも読めることばに「翻訳」しました。難解な法律用語を平易なことばへと置き換えることは、ただ「やさしくする」のではなく、本質を正確に伝えるために、より深く理解している必要があるという意味で、実はとても高度な作業なのです。


ちひろ美術館が動画で届けた理由

この本が2006年に出版されてから約20年近くが経ちますが、ちひろ美術館はこの作品をあらためて「いまこそ読み直してほしい」という思いで、朗読動画として制作・公開しました。

いわさきちひろといえば、柔らかなタッチで子どもたちを描いた水彩画で知られる画家です。戦争を経験し、平和への強い祈りを作品に込め続けたちひろの精神と、井上ひさし氏が憲法を通して伝えようとしたメッセージは、深いところで重なり合っています。動画という形で届けることで、本を手に取る機会がなかった子どもたちや大人たちにも、そのことばが届きやすくなるのではないでしょうか。


「大人がまず理解する」ことの大切さ

ここで少し立ち止まって考えたいのが、「まずは大人がしっかり理解しないといけない」という視点です。

子どもに憲法を伝えようとするとき、大人自身が「なんとなく知っている」レベルでは、本当の意味で伝えることはできません。たとえば前文には「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起きることのないやうにすることを決意し」という一文があります。これは、政府を信頼しながらも、市民がしっかりと監視し続けることを求めているという意味でもあります。

また、第九条についても、「戦争しない」という単純な理解にとどまっていては不十分です。戦力の不保持、交戦権の否定という内容が現実の安全保障とどう向き合ってきたのか、そしていまどのような議論が起きているのか。大人として、その複雑さも含めて理解しようとする姿勢が求められます。


性善説だけでは足りない

もうひとつ忘れてはいけない視点が、「性善説の視点だけから考えていてもいけない」というものです。

憲法の精神は、基本的に「人間は善である」という信頼をベースにしています。しかし現実の世界では、権力は腐敗することもあるし、善意が悪用されることもあります。憲法が「権力を縛るルール」として存在している理由は、まさにそこにあります。「信頼はするけれど、制度としてきちんと縛っておく」という発想は、民主主義の根幹です。

子どもに「みんな仲良くしようね」と伝えるだけでは不十分で、「もし誰かが間違ったことをしたとき、どうやって止める仕組みがあるのか」まで一緒に考えることが、真の意味での憲法教育につながるのではないでしょうか。


あなたも「読み直す」ところから

井上ひさし氏のことばを借りれば、憲法は「むずかしいものではなく、私たちの生活に直結したもの」です。この本は子ども向けに書かれていますが、大人が読んでも新鮮な気づきがあります。むしろ、大人こそ読み直すべき一冊かもしれません。

ちひろ美術館の朗読動画とあわせて、ぜひ家族で一緒に見て、話し合うきっかけにしてみてください。憲法について語り合う食卓は、きっと日常をほんの少し豊かにしてくれるはずです。

大和京子

子供を守るために日本をよくしたいと願う母です! 1人でも多くの人達に思いが届きますように。

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