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まずは「知る事」から始まる

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昭和の闇夜に響いた声

1936年2月26日、東京の夜明け前。約1,500名の陸軍青年将校と下士官兵が雪の中を動き始めました。首相官邸、陸軍省、警視庁……次々と政府の中枢が武装集団に占拠され、斎藤実内大臣や高橋是清蔵相ら重臣が次々と殺害されていきます。これが「二・二六事件」の幕開けです。

事件発生から3日目、戦場と化した永田町周辺に向けて、ラジオから繰り返し流れてきた言葉がありました。

「兵に告ぐ。今からでも遅くはない。原隊に帰れ。抵抗する者は逆賊として討つ」

昭和天皇の意を受けて発せられたこの「兵に告ぐ」は、軍部による「血の粛清」を回避し、日本軍同士が市街地で撃ち合うという最悪の事態を未然に防ぐことに成功しました。ラジオという新しいメディアが、歴史の分岐点で確かに機能した瞬間です。

しかし、ここで一歩立ち止まって考えてみたいのです。「兵に告ぐ」は確かにクーデターを止めました。でも、その先に何が待っていたのかを——。

青年将校たちは本当に「騙された」のか?

決起した将校たちは「皇道派」と呼ばれる集団で、天皇を取り巻く「君側の奸(くんそくのかん)」を排除し、昭和維新を断行しようとしていました。農村の貧困、資本家による搾取、腐敗した政治家……彼らが抱えていた怒りそのものは、当時の日本社会が実際に抱えていた矛盾から生まれた本物だったと言えます。

ところが、陸軍内部にはもう一つの派閥がありました。「統制派」です。合理的な組織運営と国家総動員による近代戦争を志向する統制派は、皇道派の「精神主義的クーデター」を苦々しく見ていました。

陰謀論的な視点から言えば、「統制派がクーデターを黙認し、あるいは誘導したのではないか」という疑惑は今も消えていません。クーデターが失敗に終わった後、統制派の東條英機らが主導権を完全に掌握したからです。皇道派の中堅将校を「暴走した反乱軍」として処断することで、邪魔者を一掃し、自分たちの権力基盤を固めた——そういう構図が見えてくるのです。

ラジオが止めたのは「内戦」だけではなかった

「兵に告ぐ」の放送は、たしかに市街戦という最悪の結末を防ぎました。しかし見方を変えれば、それは鎮圧の演出でもありました。

昭和天皇が反乱軍の行動に激怒し、断固たる鎮圧を命じたことは歴史的事実です。しかし、その後に起きたことを振り返ると、事件は軍部にとって「おいしい結果」をもたらしています。二・二六事件後、軍部は政府に対する発言力を飛躍的に強めました。「現役武官制」の復活により、陸海軍大臣には現役の軍人しか就任できなくなり、軍部が内閣を事実上コントロールできる仕組みが整備されたのです。

つまり、「暴走した若者たち」の行動が、結果として日本を軍国主義へと引きずり込む「ガス抜き」になったとも解釈できます。真に責任を問われるべき実力者たちは、クーデターという劇薬を使いながら、自分たちの手は汚さなかったのです。

誰が戦争への扉を開いたのか

世界史を振り返ると、クーデターや政変の陰に「第三の意図」が潜んでいることは珍しくありません。

たとえば、1933年のドイツ国会議事堂放火事件。ナチスがその混乱を利用して全権を掌握したのは有名な話です。二・二六事件でも同様の「混乱の利用」があったとすれば、本当の黒幕は銃を手に街頭に立った青年将校たちではなく、その混乱を計算尽くで活用した官僚・軍上層部の一部だったかもしれません。

さらに視野を広げると、当時の日本をめぐる国際的な文脈も気になります。満州事変(1931年)以降、日本は国際連盟を脱退し、欧米列強との摩擦を深めていました。軍国化を加速させることで利益を得る勢力は、日本国内だけにいたわけではありません。武器産業、国際的な情報機関、特定のイデオロギーを広めたい組織……そうした外部からの「見えない手」についても、完全に否定することはできないでしょう。

「兵に告ぐ」が示す教訓

ラジオが内戦を止めたのは事実です。しかし、その後の日本は大東亜戦争、第二次世界大戦という、はるかに大きな戦争へと突き進んでいきました。「兵に告ぐ」は個々の命を救いましたが、より大きな歴史の流れを止めることはできませんでした。

情報が人々の行動を変えうる力を持つのと同様に、情報を「誰が、いつ、どのように流すか」によって、歴史は意図せぬ——あるいは意図された——方向へと動いていきます。

あれから90年近くが経った今、私たちはあの雪の朝から何を学べるでしょうか。歴史の表舞台に踊り出た人物だけを見るのではなく、その背後に潜む構造や意図を読み解こうとする視点——それこそが、繰り返される「歴史の罠」に気づくための第一歩かもしれません。

上城 孝嗣

日本を愛する人と繋がりたい🇯🇵🌸毎日「気づき」を提供するために発信中! 嘘を教える教育や、メディアに破壊され続けてきた日本人の魂。まずは何事にも好奇心を持ち、世界にも目を向ける事。これまで知らなかった多くの事を学ぶと全てが繋がって真実が見えてきます。 「知らないのは恥ではない、知ろうとしないのが恥である」

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