メキシコが今、かつてないほどの混乱に陥っています。カルテル指導者の殺害をきっかけに、ハリスコ、ミチョアカン、コリマ、タマウリパス、グアナファト、アグアスカリエンテス、ナヤリット、サカテカス、ゲレロの9州以上で麻薬密売所が同時多発的に放火され、21か所以上が現在も燃え続けているという異常事態です。これは単なる犯罪組織の内輪もめではなく、組織的かつ計画的な「示威行動」と見るべきでしょう。
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カンクン、プエルト・バジャルタ……観光地が戦場に
世界中から年間数百万人もの観光客を迎えるカンクンでは、封鎖と銃撃戦が市街地で勃発しました。リゾートのビーチとは全く異なる顔を見せるこの都市の現実に、多くの旅行者が震え上がっているはずです。プエルト・バジャルタでは、日本人にもおなじみの大型倉庫型スーパー「コストコ」が炎上し、すべての出口道路が封鎖されるという前代未聞の事態が起きています。逃げ場を失った市民や観光客が、店内や近隣に取り残されたとの報告もあります。
グアダラハラ国際空港では乗客が足止めされ、フライトは無期限で運休状態です。空港という「安全地帯」のはずの場所が機能不全に陥っている事実は、今回の混乱がいかに広範囲かつ深刻であるかを物語っています。
ティファナではアメリカとの国境付近でカージャックや道路封鎖が相次ぎ、米国側も神経を尖らせています。実際、在メキシコ米国大使館は自国民に対して「不要不急の移動を避けるよう」勧告を発令しました。これは外交的な建前であり、実態はさらに深刻な状況を示唆しているとも言えます。
陰謀論的視点――誰が「指導者」を消したのか?
ここで少し踏み込んだ視点を紹介します。カルテルの指導者が殺害されると、必ずこのような報復の嵐が起きます。しかし今回の規模の大きさと、同時多発性を考えると、単なる「軍や警察の摘発作戦」が成功しただけとは思えないという声もあります。
一部では、今回の殺害が対立する別カルテルによる謀略である可能性が指摘されています。すなわち、権力の空白を生み出し、混乱に乗じて勢力拡大を狙う側が、当局の手を借りて――あるいは情報を流して――ライバルの指導者を排除させたというシナリオです。カルテルと地元政治家・警察との癒着は長年にわたって指摘されており、「誰が本当の黒幕か」は外側から見ただけではなかなか見えてきません。
また、刑務所が複数箇所で同時に襲撃され、警備員が死亡して脱獄が報告されているという事実も見逃せません。これだけ広域かつ同時多発的な行動は、高度な組織力と事前の綿密な計画なしには不可能です。一部の研究者は「これは指示系統が生きている証拠であり、指導者が死んでも組織は機能し続けている」と指摘しています。つまり、「首を切れば終わる」という発想自体が幻想である可能性が高いのです。
州兵も対応に追われる中、メキシコ政府は何をしているのか
州兵が複数の州で同時に銃撃戦に巻き込まれているという報告は、治安機関がすでに手いっぱいであることを意味しています。メキシコ連邦政府はこの混乱に対して公式声明を出しつつも、実態として現場の対応力は限界に達しつつあるとも見られています。過去にも同様の事態でメキシコ軍が後退を余儀なくされたケースがあり、カルテルの火力と組織力を決して侮れません。
日本人旅行者への警告
メキシコは日本人にも人気の渡航先です。カンクンやプエルト・バジャルタは新婚旅行や卒業旅行の定番スポットでもあります。現在、外務省の危険情報を改めて確認し、渡航予定がある方は航空会社・旅行会社と速やかに連絡を取ることを強くお勧めします。「自分は観光客だから大丈夫」という楽観は、今回の事態においては命取りになりかねません。カルテルにとって、標的は敵対勢力だけとは限らないからです。
炎はまだ燃え続けています。この事態がどこに向かうのか、世界が固唾をのんで見守っています。







